2008年02月23日

残虐記

児童誘拐と性という難しいテーマに立ち向かった作品です。

被害者の少女が事件後自らの精神の均衡を保つべく、色々な事を空想します。

その想像力、精緻さには驚くばかりのなのですが、何故かリアリティを感じてしまいます。

著者の力量を表しているのかと思いますが、ヒョットして著者自身が同様の経験をしたことがあるのではないか、と感じるほどのリアリティです。

一方で、現実なのか夢なのか良く分からない部分も出てきます。
この感覚は何処かで感じた事があるなと思ったのですが、著者の「玉蘭」を読んだ時に感じたことであると思い出しました。

読後感は決して良くありませんが、小説という枠に納まりきらないところに、妙な魅力を感じてしまう作品です。

残虐記 (新潮文庫 き 21-5)
新潮社 [著] 桐野 夏生
ASIN:4101306354 /文庫/255頁
発売日:2007-07
ランキング&評価:---位 4.0
価格:¥ 420 [2008-02-23 Amache]
5 - 無限大の謎
4 - 堕ちきらない切なさ
3 - 小説になりえなかった
1 - これは本当に「作品」なのか?
2 - 意外にも奥行きのない作品でした


posted by 京極恭輔 at 16:26 | 上海 ☀ | Comment(0) | TrackBack(0) | BOOK

2008年02月17日

隠蔽捜査

正論の人、警察庁総務課長「竜崎伸也」が主人公。

「竜崎伸也」は、強烈なエリート意識を持っているが、単に特権があるのではなく大きな責任と義務を負っていると認識している。
組織の中で正論を貫くと当然軋轢が生まれるが、敢えてそれを貫いている為、変人扱いされている。

その「竜崎伸也」が、ある連続殺人事件での警察庁の方針と同時期に家族が起こした問題で苦悩する。

官僚として、一人の父親としての生き様も素晴らしいのですが、危機に瀕している組織人として原理原則を貫き正義を全うする姿に感動します。

警察官僚を目指し青春を犠牲にして努力し、官僚に個人的な付き合いなど必要ないと考え生きてきた「竜崎伸也」に対し読み始めは、超堅物で人間味のかけらも無い冷たい人間との印象を持つと思いますが、読み終わる頃には印象はガラリと変わり爽やかな気持ちで読み終えることができます。

隠蔽捜査 (新潮文庫 こ 42-3)
新潮社 [著] 今野 敏
ASIN:4101321531 /文庫/409頁
発売日:2008-01-29
ランキング&評価:---位 4.0
価格:¥ 620 [2008-02-17 Amache]
4 - 読後感さわやか
5 - 危機管理の対応で見える組織と個人の質
5 - 合理と非合理の狭間で苦悩する人間像
3 - エリートキャリアを主人公に据えた、異色警察官僚小説


posted by 京極恭輔 at 16:08 | 上海 | Comment(1) | TrackBack(0) | BOOK

2008年02月11日

灰色の北壁

山岳ミステリー3編が収録されています。

久しぶりに真保裕一らしい作品を読みました。

3編とも登場人物の心理が非常に丁寧に描かれており、単なるミステリー以上の出来栄えになっています。

迫真の登山描写に思わず手に汗を握りますが、なんと真保裕一はインドア派なんですね。
しかも、山を愛する男のストイックで有りながらも熱い思いも実に見事に書き上げています。

実体験が殆ど無いにも関わらずこれだけ迫真に迫る描写ができるのは、そのまま著者の力量を現しているのでしょう。

3編の中で最もお勧めなのは表題にもなっている「灰色の北壁」です。

灰色の北壁 (講談社文庫 し 42-14)
講談社 [著] 真保 裕一
ASIN:4062759551 /文庫/296頁
発売日:2008-01
ランキング&評価:---位
価格:¥ 600 [2008-02-11 Amache]
No User Review


posted by 京極恭輔 at 12:27 | 上海 | Comment(0) | TrackBack(0) | BOOK

2008年02月03日

ラッシュライフ

伊坂幸太郎作品は初めて読みました。

パラパラとめくった時に日本語でラッシュと発音する4つの英単語の意味とエッシャーの騙し絵が目に留まり面白そうだなと思い購入しました。
5つの物語が微妙に絡み合いながら同時に進んでいきます。
読み進めていく間に、その繋がりが徐々に見えてくることもあり、その先が気になり途中で止められなくなります。

それぞれの物語の中に「好きな日本語を書いて下さい」と言う紙を持つ外人女性が出てきますが、そこに物語の登場人物が書き込む「好きな日本語」、超越した存在として現われる老いた柴犬も効果的に使われており、作品全体に厚みが出来ています。
毎年、素晴らしい作家に巡りあいますが、今年は年初から幸先が良いようです。

豊潤な人生を過ごしたいです。

ラッシュライフ (新潮文庫)
新潮社 [著] 伊坂 幸太郎
ASIN:4101250227 /文庫/469頁
発売日:2005-04
ランキング&評価:---位 4.5
価格:¥ 660 [2008-02-03 Amache]
5 - う〜ん('・ω・`)
4 - 後味すっきり。
4 - 最後まで読んで初めて、すべてが結びつく。
5 - うわっ、やられた!
5 - エンタメ小説の頂点



posted by 京極恭輔 at 13:39 | 上海 🌁 | Comment(0) | TrackBack(0) | BOOK
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